ソフトバンク(9434)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、ソフトバンクを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「女性役員比率40%」です。
有報の数字(第40期)
- 純利益
- 5,508億円
- ROE
- 19.3%
- 従業員数(連結)
- 58,432人
- 従業員数(単体)
- 19,150人
- 平均年間給与(単体)
- 871万円
- 平均年齢
- 42.0歳
- 平均勤続年数
- 14.8年
出典:ソフトバンクの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
ソフトバンクを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ソフトバンクに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはソフトバンクの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、ソフトバンク株式会社 有価証券報告書 第40期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
ソフトバンクは、通信で稼いだお金と借入を、AIと通信設備に大きく注ぎ込もうとしている会社だ。
知っておきたいことは3つある。
この記事の対象は「ソフトバンク株式会社(9434)」である。投資会社の「ソフトバンクグループ株式会社(9984)」とは別法人なので、混同しないでほしい。
2026年度から新しい5年計画が始まった。翌期の設備投資は8,880億円で、AI計算基盤が基地局と並んで計画に載っている。
有価証券報告書には極端な数字が3つ並ぶ。女性役員比率40.0%、ROE19.3%、自己資本比率16.0%である。
この記事では、この会社が何に賭け、その代償として何を抱えているのかを確かめる。
第1章 ソフトバンクは何に賭けているのか
1-1. 新しい5年計画は「AI」を軸に始まる
中期経営計画とは、会社が数年先の目標と進め方を示した計画のことだ。前の計画は2023〜2025年度の3年間で、当期が最終年度だった。2026年度からは2030年度までの5年計画が始まる。
成長戦略の名は「Activate AI for Society」である。全事業でAIを動かし、社会への実装を進めるという意味だ。
賭けは3つに分かれる。
通信:5G SAの拡大に加え、成層圏に飛行船を浮かべて電波を出す「空飛ぶ基地局(HAPS)」で、災害に強い通信網をつくる。
法人向け:国内最大規模のAI計算基盤と、データを国内で管理するソブリンクラウドを整える。狙いは顧客1社あたりの取引額を増やすことだ。
2030年度の長期ビジョンは「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」だ。
志望動機では、3つの賭けのうちどこに関わりたいかを自分の言葉で語る。逆質問では「2030年度のビジョンに向けて、いま最も進捗が重い賭けはどれか」を聞ける。
1-2. 賭けは設備投資と借入で裏づけられている
賭けが口先でないことは、決算の数字に出ている。当期の売上高は7兆387億円で、前期から7.6%増えた。売上は初めて7兆円を超え、営業利益も1兆円を超えた。
翌期の設備投資予定額は8,880億円である。設備投資とは、基地局やデータセンターなど、将来の稼ぎの元になる設備への支出だ。そのうち5,750億円が、基地局・ネットワーク設備とAI計算基盤・AIデータセンターに向かう。
資金の調達方法には、自己資金のほかに借入金と社債等も挙がっている。有価証券報告書に載る主な借入3本の期末残高は、合計で約1兆4,989億円だ。
1-3. 社員の4割以上はインターネットサービス側にいる
PayPayを含む金融事業のファイナンスは5,299人だ。ソフトバンク株式会社単体の従業員は19,150人にとどまる。
通信会社というイメージとは違い、人員の多くはネット事業と金融事業に配置されている。
志望動機で「通信だけでなく、ネットと金融も含めた経済圏で働きたい」と語る根拠になる。逆質問では、グループ内の配属や異動の考え方を聞ける。
1-4. 28卒が入る2028年4月は新計画の3年目
28卒の入社は2028年4月である。ここを会社の時間軸に重ねると、新しい5年計画の3年目にあたる。
そして2030年度に、長期ビジョンの答え合わせが来る。AI計算基盤は動いているか。空飛ぶ基地局は飛んでいるか。企業向けAI「Crystal intelligence」は使われているか。これらが分かる時期に、あなたは社内にいることになる。
志望動機では「2030年度の答え合わせの時期に、中で動いていたい」と時間軸で語れる。逆質問では、入社3年目の自分に期待される役割を聞ける。
1-5. 自己資本比率16.0%と高いROEは表裏一体
自己資本比率とは、総資産のうち返す必要のない自分のお金が占める割合のことだ。ソフトバンクは16.0%で、KDDIの26.6%を下回る。
ROEとは、自己資本に対してどれだけ利益が出たかを示す指標である。ソフトバンクは19.3%と高い。ただし第36期の27.3%から、5期連続で下がってきた。
高さの理由の一つは、分母の自己資本が小さいことだ。借入を厚く使う設計なので、同じ利益でもROEは高く出る。これは良し悪しではなく、設計の違いである。
課題指摘として「ROEの高さは借入の厚さの裏返しだと理解している」と述べられる。そのうえで、新しい投資の資金をどう賄う方針かを逆質問にできる。
第2章 通信業界の収益構造
2-1. 売上は大きいが、利益率はKDDIより低い
ソフトバンクの売上高7兆387億円は、KDDIより大きい。しかし売上に対する当期利益の割合は、ソフトバンク7.8%に対しKDDI11.6%である。
理由の一つは、スマートフォンやIT機器を売る流通事業にあると考えられる。物を仕入れて売る事業は、売上が大きく立つ一方で利益率は低くなりやすい。
売上の大きさと稼ぐ力は別の話だ。
課題指摘として「規模は大きいが利益率に伸びしろがある」と述べ、自分が利益率にどう貢献できるかにつなげる。逆質問では、利益率を上げるための重点領域を聞ける。
2-2. 年収はKDDIより低く、女性役員比率は高い
働く側の事実を並べる。平均年収はソフトバンク871万円、KDDI1,051万円である。平均年齢は42.0歳と42.3歳でほぼ同じなので、約180万円の差は処遇の差といえる。平均勤続年数は14.8年と16.4年だ。
一方、女性役員比率はソフトバンク40.0%に対し、KDDIは17.6%である。意思決定層の多様性は、働く環境にも影響する。
志望動機では、女性役員比率40.0%を根拠にダイバーシティの設問へ答えられる。年収の差は、評価や昇給の仕組みを聞く逆質問の材料になる。
2-3. 通信業界に共通する4つのリスク
通信業界には構造的なリスクが4つある。
料金の値下げ圧力:政府や競争環境から引き下げを求められると、売上に直結する。
設備投資の負担:通信規格の更新には巨額の投資が必要になる。
成長の限界:人口減少とスマートフォンの普及一巡で、契約数の伸びは見込みにくい。
金融・非通信事業のリスク:PayPayなどの新領域は、通信とは別のリスクを持つ。
ソフトバンクは自己資本が薄いため、これらへの耐性が弱まる面がある。金利が上がれば、借入のコストが直接効いてくる。
課題指摘として「薄い自己資本と金利上昇のリスク」を挙げられる。逆質問では、料金競争が続く中で非通信事業をどう育てるかを聞ける。
ソフトバンクの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(料金は上げられず、契約数は飽和している/自己資本比率16.0%が抱えるもの/設備投資は止められず、回収は料金の外に求めるしかない/社会インフラであることの重さ)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上7兆387億円、当期利益5,507億円で利益率は7.8%。自己資本比率16.0%はこの記事シリーズで最も低く、その裏返しでROEは19.3%と高い。ただしROEは5期連続で低下している。女性役員比率40.0%はシリーズ最高水準だ。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 通信業界の構造的課題——料金は上げられず、契約数は飽和している/自己資本比率16.0%が抱えるもの/設備投資は止められず、回収は料金の外に求めるしかない/社会インフラであることの重さ
- 第3.5章 面接前に押さえるソフトバンクの最新ニュース10本——売上7兆387億円、自己資本比率16.0%、ROE19.3%と5期連続低下、女性役員比率40.0%まで
- 第4章 内定者の正体——「成長する通信会社だから」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収871万3,000円の読み方と、単体19,150人の組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続14.8年の読み方、女性役員比率40.0%という数字、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——財務を組み込んだ回答例と逆質問3本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生