中部電力(9502)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、中部電力を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「JERAが利益の32%」です。

有報の数字(第102期)

売上高
3兆5,460億円
純利益
2,278億円
ROE
7.7%
従業員数(連結)
22,700人
従業員数(単体)
3,367人
平均年間給与(単体)
945万円
平均年齢
42.5歳
平均勤続年数
19.0年

出典:中部電力の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

中部電力を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、中部電力に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは中部電力の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、中部電力株式会社 有価証券報告書 第102期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

中部電力は、売上も社員も計上されない合弁会社が利益の3割強を生み、社員の4割強が利益の伸びにくい送配電にいる会社だ。

知っておきたいことは3つある。

・JERAは東京電力ホールディングスと半分ずつ出資する火力発電の会社だ。売上と従業員は中部電力に入らず、利益941億円だけが入る。
・会社は「多角化から転換」し、中期的にROE 8%以上を目指している。ROEは、株主のお金でどれだけ純利益を出したかを示す指標だ。
・浜岡原子力発電所の不適切事案の調査が続き、新しい中期経営計画は骨子しか出ていない。

この記事では、この3つを有価証券報告書の数字で確かめ、面接で使える論点に変えていく。

第1章 中部電力は何に賭けているのか

1-1. 会社は「多角化から転換」し、ROE 8%以上を目指す

有報には、会社が何に賭けているかが書いてある。柱は3つだ。

1つ目は、事業を絞ることだ。会社は「多角化から転換」し、エネルギーと相乗効果のある事業に集中すると書く。目標は、中期的にROE 8%以上である。当期は7.7%で、目標まであと少しの位置にいる。

2つ目は、自己資本の厚さだ。自己資本比率とは、総資産のうち返済不要のお金が占める割合を指す。会社は「30%半ばから後半」を目安にしている。当期は41.0%で、その目安を上回っている。

3つ目は、再生可能エネルギーと火力の脱炭素だ。再エネは、2030年頃に2017年度比で320万kW以上の拡大を目指す。火力はJERAが担い、短期は石炭火力も使う。中長期はLNG、水素、アンモニアへ段階を分けて移す。

面接での使い方

志望動機では、会社が事業を絞る方向に賭けている点を根拠にできる。逆質問では、ROE 8%の目標に対し、目安より厚い自己資本をどう使うのかを聞ける。

1-2. 浜岡の不適切事案で、新中期経営計画はまだ骨子の段階だ

有報の経営方針は、不祥事の説明から始まる。浜岡原子力発電所の審査に関わる不適切事案で、外部専門家だけの調査委員会が調べている。調査は今も続いている。

前の中期経営計画の目標は達成した。しかし新しい計画は、2026年4月に骨子を公表しただけだ。本体は、調査結果を踏まえて公表するとしている。

28卒の入社は2028年4月だ。新計画が動き、調査を受けた改善が進む時期に重なる。

事業環境の認識は、追い風と逆風に分かれる。追い風は、GXとDXで電力需要の見通しが増加傾向に変わったことだ。逆風は、燃料価格、物価、金利、円安の不確実性である。

会社は「原子力発電の最大限の活用」も掲げる。信頼回復と原子力の活用は、同じ問題の表と裏だ。

面接での使い方

課題指摘では、原子力を活用すると掲げる会社が、その審査で不適切事案を起こした点を押さえられる。逆質問では、調査結果が新中期経営計画にどう反映されるのかを聞ける。

1-3. JERA:売上ゼロ、従業員ゼロで、利益の3割強を生む

中部電力の報告セグメントは3つだ。その中に、売上も従業員も空欄の行がある。JERAだ。

JERAは、中部電力と東京電力ホールディングスが出資する火力発電の合弁会社である。持分法適用関連会社なので、売上や費用は連結されない。持分に応じた利益だけが、持分法投資利益として入る。

その利益は941億円で、前期から39.8%増えた。連結経常利益の3割強にあたる。

投資額は約1兆6,000億円で、総資産の約2割を占める。発電を共同会社に出し、利益だけを受け取る形だ。

面接での使い方

志望動機では、利益の3割強を生む事業を持つ会社だと根拠にできる。逆質問では、中部電力の社員がJERAの事業にどう関わるのかを聞ける。

1-4. ミライズは1人あたり7,106万円、パワーグリッドは481万円

セグメント利益を従業員数で割ると、差が際立つ。

・ミライズ(小売):1,942人で、1人あたり7,106万円
・パワーグリッド(送配電):9,886人で、1人あたり481万円

差は14.8倍だ。

ミライズは電気の小売を担い、設備をほとんど持たない。少ない人数で大きな売上を扱う。

パワーグリッドは、電柱、電線、変電所の建設・保守・復旧を担う。人も設備も要る。連結従業員の43.6%がここにいて、設備投資の約7割もここに集まる。

送配電は、国が認めた収入の範囲で料金が決まる。そのため利益は大きく増やせない。第102期のセグメント利益は、前期からほぼ横ばいだった。

面接での使い方

課題指摘では、人員が最も多い送配電の利益が伸びにくい点を、構造の課題として語れる。志望動機では、事業ごとに稼ぎ方が違うと理解していると示せる。

1-5. 働く側の事実:年収945万円、従業員は5期で2割減

・連結従業員は22,700人。提出会社は3,367人
・平均年齢は42.5歳、平均勤続年数は19.0年
・平均年間給与は945万円で、前期比+5.2%

給与は、外部の賃金水準や物価動向などを考慮して決める方針だ。年1回以上、労働組合と議論・交渉して見直す。

一方で、連結従業員は5期で28,365人から22,700人へ、20.0%減った。

面接での使い方

志望動機では、物価動向を踏まえて給与を見直す姿勢を根拠にできる。逆質問では、従業員が5期で2割減った背景を聞ける。

第2章 電力業の収益構造

2-1. 発電・送配電・小売で、稼ぎ方がまったく違う

中部電力のセグメントは、電力業の3分割をそのまま映している。

・発電:JERA(火力)、その他(原子力部門・再生可能エネルギーカンパニー)
・送配電:パワーグリッド
・小売:ミライズ

小売は競争にさらされる。新電力を含む多くの事業者と、顧客を奪い合う。売上は最大だが、設備が少ないぶん1人あたり利益は高い。

送配電は地域独占で、料金は国の認可で決まる。効率化すれば利益は残るが、大きくは増えない。

発電は市場で電気を売る。燃料価格と電力市場価格の差が利益になるため、振れ幅が大きい。1つの会社に、競争・規制・市況の事業が同居している。

面接での使い方

志望動機では、どの事業で働きたいかを稼ぎ方の違いから説明できる。逆質問では、事業ごとに求められる力の違いを聞ける。

2-2. 持分法を知ると、JERAの利益の見え方が変わる

出資先の扱いは、持株比率で変わる。過半数を持てば連結子会社で、売上も費用も合算する。過半数に届かない関連会社は持分法で、持分相当の純利益だけを計上する。

JERAは、中部電力も東京電力ホールディングスも過半数を持たない。そのため持分法になる。中部電力の売上にJERAは1円も入らず、経常利益にだけ入る。

決算書からは、JERAの売上や費用が分からない。利益の数字だけが見える。一方で会社にとっては、従業員を抱えずに利益を得られる形だ。巨大な火力発電事業を2社で分け合う形は、電力自由化への対応として選ばれた。

面接での使い方

課題指摘では、利益の3割強が中身の見えにくい出資先に頼る点を指摘できる。逆質問では、JERAの経営状況を中部電力がどう把握しているのかを聞ける。

2-3. 電力会社の利益は、燃料価格で大きく振れる

電力会社の利益は、燃料価格と料金のずれで大きく振れる。第98期は、経常損失が593億円だった。2年後の第100期は、純利益が4,031億円に達した。

この振れを生むのが燃料費調整制度だ。燃料価格の変動が、時間差で料金に反映される仕組みである。第102期は売上が減ったが、利益は増えた。

面接での使い方

課題指摘では、利益が燃料価格に左右され、単年の数字では実力が測りにくい点を挙げられる。逆質問では、利益の振れを抑えるために会社が何をしているのかを聞ける。

中部電力の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(2027年3月期は経常△36.4%へ下方修正、第1四半期は営業赤字/JERA依存という読みにくさ/原子力——「その他」に含まれる不確実性/送配電の投資は止められない)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上高3兆5,460億円(△3.4%)の減収ながら経常利益2,910億円(+5.3%)・純利益2,277億円(+12.7%)と増益、自己資本比率は41.0%へ改善、報告セグメントは3つでJERAは売上ゼロ・従業員ゼロのまま利益941億円(+39.8%)=連結経常利益の32.4%を稼ぎ投資額は1兆6,268億円(総資産の21.3%)、1人あたり利益はミライズ7,106万円とパワーグリッド481万円で14.8倍の差、送配電は設備投資の69.0%を担いながらセグメント利益は+0.03%、平均年収945万2,983円(+5.2%)、そして2027年3月期は第1四半期が営業250億円の赤字となり通期予想も経常△36.4%へ下方修正——中部電力の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 電力業の構造的課題——2027年3月期は経常△36.4%へ下方修正、第1四半期は営業赤字/JERA依存という読みにくさ/原子力——「その他」に含まれる不確実性/送配電の投資は止められない
  • 第3.5章 面接前に押さえる中部電力の最新ニュース10本——JERA 32.4%・14.8倍・下方修正まで
  • 第4章 内定者の正体——「インフラを支えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収945万円の読み方と、3セグメントのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続19.0年、5期で従業員20.0%減、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 中部電力の平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第102期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は945万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 中部電力の従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第102期)では、提出会社(単体)が3,367人、連結が22,700人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 中部電力が金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。