関西電力(9503)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、関西電力を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「経常利益5,185億円」です。
有報の数字(第102期)
- 売上高
- 4兆566億円
- 純利益
- 3,801億円
- ROE
- 11.7%
- 従業員数(連結)
- 32,482人
- 従業員数(単体)
- 8,336人
- 平均年間給与(単体)
- 939万円
- 平均年齢
- 42.4歳
- 平均勤続年数
- 19.4年
出典:関西電力の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
関西電力を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、関西電力に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは関西電力の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
結論から言う。関西電力は、原子力で電力会社トップの利益を出しつつ、データセンターなど電気の外側へ賭けを広げる会社だ。
知っておきたいことは3つある。
2026年3月期の経常利益は5,185億円で、大手電力の中で最も高い。経常利益とは、本業と資金面の損益を合わせた通常の利益のことだ。
2027年3月期の経常利益予想は2,900億円で、44.1%の減益だ。直近の高い利益は、一時的な押し上げを含んでいた。
会社は2026〜2028年度の目標として、純利益2,700億円以上を掲げた。28卒が入社する2028年は、その最終年度にあたる。
この記事では、会社が何に賭け、それが数字にどう表れ、他社と何が違うのかを確かめる。
第1章 関西電力は何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた目標——ROE 8.0%以上、純利益2,700億円以上
関西電力は2026年4月に、2026〜2028年度の財務目標を公表した。就活生が覚えるべき数字は3つだ。
純利益:2,700億円以上
ROE:8.0%以上
自己資本比率:30%台半ば
ROEとは、株主から預かった資金で、どれだけ利益を出せたかを示す比率だ。直近のROEは11.7%で、目標の8.0%を上回っている。
自己資本比率は、会社の資産のうち返済不要の資金が占める割合である。直近は35.1%で、目標の水準に届いている。
一方で、経営理念の説明には、過去の金品受取り問題が自ら書かれている。「社会的責任の全う」について、社内外から厳しい指摘を受けたという内容だ。
会社は不祥事を隠さず、目標の説明と同じ場所に記している。
逆質問に使える。「ROE 8.0%以上の目標に対し、直近は11.7%です。超過分は投資と還元のどちらに回す方針ですか」と聞ける。
1-2. 米国企業と組み、データセンターを建てる
関西電力の成長戦略は、電気を売ることの外側に伸びている。
米国CyrusOne社と合弁会社を設立し、京都府精華町でデータセンターを建設中だ。第1号案件は、2027年度中の営業開始を目指している。
電力会社が建てる理由は分かりやすい。データセンターは電気を大量に使う。電気を安定して作り、送る力を持つ側が、その上に事業を建てる形である。
海外では、米国で学生向け賃貸住宅の新築工事にも着工した。電力とは別の不動産事業だ。
会社はこの方向性を「エネルギー3.0」と呼ぶ。電気とガスに、省エネなどのソリューションを組み合わせて売る考え方だ。対象は関西だけでなく、全国と海外に広げる。
志望動機に使える。「地域独占だった電力会社が、全国・海外へ出ようとしている点に惹かれた」と語れる。逆質問なら「データセンター事業で、電力会社ならではの強みは何ですか」と聞ける。
1-3. 利益の振れ幅と、2027年3月期の減益予想
関西電力の経常利益は、年によって大きく動く。
2022年度:△66億円(赤字)
2023年度:7,659億円
2025年度(2026年3月期):5,185億円
赤字の翌年に7,659億円を出す年もある。この振れ幅の背景には、燃料価格の動きがある。燃料が高騰すると、発電コストはすぐには料金に転嫁できない。
2026年3月期の5,185億円は、会社の目標3,600億円以上を上回った。ただし2027年3月期は、売上が10.9%増の予想でも、経常利益は2,900億円と44.1%減る見通しだ。
背景は、燃料価格の変動が料金に反映されるまでの時間差だ。前期の利益を押し上げた一時的な要因が、今期は消える。
それでも配当は、年75円から80円へ増やす計画だ。
課題指摘に使える。「単年の利益ではなく、燃料価格に左右される構造を見ています」と話せる。逆質問なら「利益が振れる中で、投資計画をどう安定させていますか」と聞ける。
1-4. 高収益の源は「原子力のフル活用」
関西電力が電力会社トップの利益を出せる理由は、原子力発電を活用していることだ。美浜・高浜・大飯の原発を再稼働させ、発電量の約3割を原子力が占める。
原子力は燃料費が安く、CO2も出さない。火力の燃料費が上がる局面でも、利益を支えやすい。
2026年3月期の営業利益率は10.8%で、電力業界でもトップ級だ。営業利益率は、売上のうち本業で残る利益の割合である。
比較対象は、福島事故後に原発を全基停止している東京電力HDだ。同社の経常利益は4,173億円で、関西電力の5,185億円より低い。
志望動機に使える。「原子力の安全確保と活用の両立が、この会社の収益の土台だと考えた」と話せる。
1-5. 4つの事業の稼ぎ方——利益の大半はエネルギー事業
関西電力の事業は4つに分かれる。
エネルギー事業(電力・ガス):経常利益3,773億円。前期比8.3%減
送配電事業:電線や送電網を運用し、託送料金で稼ぐ安定事業
情報通信事業:光回線「eo光」や格安スマホ「mineo」を持つオプテージ
生活・ビジネスソリューション事業:経常利益は前期比49.0%増
利益の中心は、依然としてエネルギー事業だ。一方で、非エネルギーの3事業は増益で、エネルギーの減益を下支えした。
つまり、電気に頼る度合いを下げる動きは、数字にも表れ始めている。
課題指摘に使える。「利益はエネルギー事業に偏っており、非エネルギー事業の伸びが鍵だ」と述べられる。配属希望の話では、成長している生活・ビジネスソリューションを挙げられる。
第2章 業界比較——大手電力会社の構造
2-1. 利益の比較——関西電力が頭ひとつ抜けている
2026年3月期の経常利益は、関西電力が5,185億円で、大手電力会社の中でトップだった。
東京電力HDは4,173億円である。差の大きな要因は、原子力の稼働状況にある。東京電力HDは福島第一の廃炉・賠償を抱え、原発を全基止めている。
配当にも差が出ている。関西電力が増配を続ける一方、東京電力HDは無配を続けている。
志望動機に使える。「電力会社の中でも、収益力の高い環境で働きたい」と言える。
2-2. 戦略の違いを4社で比べる
4社の戦略は、次のように整理できる。
関西電力:原子力のフル活用、エネルギー3.0、非電力事業への多角化
東京電力HD:福島の責任、送配電、柏崎刈羽の再稼働が課題
中部電力:JERA(東京電力と共同保有)と送配電が柱
九州電力:玄海・川内原発の再稼働と、太陽光などの再エネが柱
同じ電力会社でも、強みと課題の置き方は大きく違う。
「なぜ他の電力会社ではなく関西電力か」に答える材料になる。比較の軸は、原子力の稼働状況と非電力事業の広がりだ。
2-3. 関西電力の独自性は3つ
他社にない独自性は、次の3点に整理できる。
第1に、原子力の活用による高い収益力だ。経常利益5,185億円、営業利益率10.8%がそれを示す。
第2に、通信事業の保有だ。オプテージを通じて、電力と通信のセット販売で顧客基盤を固めている。
第3に、「エネルギー3.0」による全国・海外展開である。関西という地域の枠を超える成長戦略だ。
志望動機を3点で組み立てられる。逆質問なら「通信事業と電力事業のセット販売は、どこまで進んでいますか」と聞ける。
関西電力の構造的課題と追い風は、5つに分けて第3章で扱う(### 課題1:燃料費調整の期ずれ正常化/### 課題2:原子力の安全確保・後続機/### 課題3:燃料価格・地政学リスク/### 課題4:電力小売自由化の競争激化/### 課題5:脱炭素・GX)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題——### 課題1:燃料費調整の期ずれ正常化/### 課題2:原子力の安全確保・後続機/### 課題3:燃料価格・地政学リスク/### 課題4:電力小売自由化の競争激化/### 課題5:脱炭素・GX
- 第3.5章 押さえておくべき関西電力・電力業界の最新ニュース
- 第4章 内定者の正体
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——財務分析を組み込んだ回答例
- 第8章 やましゃんの総合評価