九州電力(9508)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、九州電力を受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「96人が利益126億円」です。
有報の数字(第102期)
- 売上高
- 2兆2,472億円
- 純利益
- 1,545億円
- ROE
- 14.1%
- 従業員数(連結)
- 21,189人
- 従業員数(単体)
- 4,383人
- 平均年間給与(単体)
- 842万円
- 平均年齢
- 42.1歳
- 平均勤続年数
- 20.8年
出典:九州電力の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
九州電力を受ける就活生は必ず読んでほしい。また、九州電力に勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは九州電力の面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、九州電力株式会社 有価証券報告書 第102期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
九州電力は、少人数の海外事業で大きく稼ぐ一方、人の多い送配電事業では利益が薄い、稼ぎ方に偏りのある会社だ。
知っておきたいことは3つある。
1つ目。2027年4月1日に純粋持株会社体制へ移る予定だ。純粋持株会社とは、自ら事業をせずグループ全体を管理する会社をいう。28卒の入社は2028年4月で、新体制の2年目にあたる。
2つ目。海外事業は従業員96人で、売上の3.4倍の利益を出す。対して送配電事業は、利益率が1.15%、利益は前期比△68.8%まで落ちた。
3つ目。ROE(出資者のお金に対する1年の利益の割合)は14.1%と高い。しかし自己資本比率は19.9%と低く、高いROEは自己資本の薄さに支えられている。
この記事では、会社が何に賭け、どこで稼ぎ、どこが苦しいのかを数字で確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。
第1章 九州電力は何に賭けているのか
1-1. 会社が賭けているもの——持株会社化と経営ビジョン2035
有報の「経営方針」には、会社の向かう先が書かれている。2025年5月に「九電グループ経営ビジョン2035」を策定し、2030年と2035年の財務・環境・人材の目標を置いた。
賭けは3つ読み取れる。1つ目はカーボンマイナスだ。排出量より削減への貢献量を多くする状態を、2050年よりできるだけ早期に実現するとある。
2つ目は地域共創だ。データセンターや半導体企業を九州に誘致し、電力の需要そのものを増やそうとしている。3つ目は、事業ごとに投じたお金に対する利益を見る経営だ。
持株会社化は、この3つ目を進めやすくする仕組みでもある。事業ごとに会社を分ければ、効率が測りやすくなる。入社2年目の2030年度には、中間の目標の答えが出る。
志望動機では、持株会社化後の事業会社で何をしたいかを語る材料になる。逆質問では、2030年度の中間目標の進み具合を聞ける。
1-2. 電力需要は増えると書いている——人員の配置
有報は、データセンターや半導体関連産業により電力需要が増えると見込む。熊本の半導体工場をはじめ、九州では大きな需要がすでに生まれている。政策面でも、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画の方向性を踏まえるとある。
人員の配置を見ると、この会社の姿が分かる。連結従業員は21,189人だ。発電・小売が5,539人、送配電が3,776人、ICTサービスが2,883人いる。
発電・小売と送配電を合わせても9,315人にとどまる。残りの約1.2万人は、それ以外のエネルギーサービスやICT、都市開発などに就いている。海外事業はわずか96人だ。
志望動機で、電気を送る仕事だけでなく周辺事業まで含めて選んだ理由を語れる。逆質問では、海外96人の体制を今後どうしていく方針かを聞ける。
1-3. 決算——減収でも純利益は+20.0%、ただし赤字の年もあった
第102期は減収だったが、純利益は前期より20.0%増えた。燃料価格の変動が時間差で料金に反映される仕組み(燃料費調整制度)があるためだ。燃料価格が下がる局面では、売上は減っても利益が残りやすい。
ただし、この会社の利益は燃料価格で大きく振れる。第99期は純損失564億円を出し、自己資本比率は10.4%まで下がった。第102期は19.9%まで戻している。
高いROEは、自己資本の薄さに支えられている面がある。赤字になれば、自己資本はすぐに削られる。
課題指摘として「利益が燃料価格で振れ、自己資本が薄い」点を挙げられる。逆質問では、財務をどこまで厚くする考えかを聞ける。
1-4. セグメント——海外は少人数で稼ぎ、送配電は薄利
セグメントとは、事業の区分のことだ。区分ごとの利益は、本業に金融収支などを加えた経常損益で示される。
海外事業は、売上37億円に対し利益が126億円ある。売上を伴わずに利益が載るのは、出資の形をとっているからだ。出資先の利益のうち持分相当額(持分法投資利益)が52億円入り、貸付金の利息も入る。
送配電事業は逆だ。利益率は1.15%まで落ちた。それでも設備投資は1,465億円あり、利益の約18倍に当たる。
発電・販売事業の収益には、国の料金負担軽減の補助金が530億円含まれる。恒久的なものではなく、一過性の要素を含む。
課題指摘では、利益を生む場所と人が多い場所がずれている点を挙げ、自分の貢献につなげられる。逆質問では、補助金を除いた発電・販売の利益の見通しを聞ける。
1-5. 働く側の事実——平均年収842万円、勤続20.8年
平均年間給与は842万円で、前期より4.4%増えた。有報は、賞与支給額等の見直しによる増加だと明記している。平均年齢は42.1歳、平均勤続年数は20.8年だ。長く勤める人が多い組織といえる。
人員の動きにも目を向けたい。連結従業員は5期でほぼ横ばいだが、売上は約3割伸びた。単体の従業員4,383人は、ほぼ全員が発電・販売事業だ。送配電は九州電力送配電として分社化されている。
志望動機では、長く働く前提のキャリアの話につなげられる。逆質問では、人員が横ばいの中で新入社員に期待する役割を聞ける。
第2章 電力業の収益構造
2-1. 出資で稼ぐという電力会社の形
海外事業は、売上が小さいのに利益が大きい。海外の発電事業などに出資し、出資先の利益の持分と貸付金の利息を受け取る形だからだ。自社で発電所を建てるわけではないので、設備投資も小さい。
出資が多い理由は2つある。発電事業は巨額の投資が要り、複数社で分け合うことが多い。また海外では現地企業との合弁が基本で、100%出資での参入は難しい。
この形の仕事は、現地で事業を管理し、投資案件を評価し、パートナーと交渉することだ。96人で126億円の利益を管理する仕事でもある。
海外志望なら、出資先の管理という仕事の中身で志望動機を具体化できる。逆質問では、出資先をどう選ぶのかを聞ける。
2-2. 送配電が儲からない理由と、その意味
送配電は地域独占で、料金は国の認可を受ける。2023年度からはレベニューキャップ制度が適用される。事業者が5年間の収入の上限を申請し、国が承認する制度だ。効率化すれば利益は残るが、上限を超えて稼ぐことはできない。
一方で、人件費や資材費は物価上昇で増えている。利益が大きく減ったのは、収入が減る中で費用が増えたためと考えられる。
それでも投資は止められない。老朽化した設備の更新、災害復旧、再生可能エネルギーの接続が要る。九州は太陽光の導入量が全国最大級で、発電を一時的に止める出力制御も九州で最初に本格導入された。
この事業は、稼ぐためというより社会インフラを維持するためにある。3,776人がそこで働いている。
志望動機では、利益が薄くても外せないインフラを担う意義として語れる。逆質問では、収入上限の中で費用増にどう対応するかを聞ける。
2-3. 原子力の稼働が収益を分ける
九州電力は、玄海原子力発電所(佐賀県)と川内原子力発電所(鹿児島県)を持ち、いずれも再稼働している。原子力は稼働率が高いほど、火力の燃料を買う量が減る。燃料価格の変動に強くなり、発電・販売事業の利益率の改善にもつながった。
足元の数字にも表れている。2027年3月期の第1四半期は、経常利益が863億円で前年同期比+45.9%だった。同業には、全号機が2011年から停止している発電所を持つ会社もあり、差が出ている。
ただしリスクもある。安全対策工事の費用、定期検査による停止、規制の変更だ。有報は、2026年2月に発生した中東危機が、燃料価格・海外事業・燃料供給に影響しうるとも記している。
最新ニュースの文脈として、四半期の好調と中東危機の両面を語れる。逆質問では、原子力の安全対策と収益のバランスをどう考えているかを聞ける。
九州電力の構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(自己資本比率19.9%という薄さ/送配電事業——利益△68.8%、投資は利益の17.7倍/補助金530億円という一過性の要素/2027年3月期は経常△13.1%——第1四半期は好調でも)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上高2兆2,472億円(△4.7%)の減収ながら経常利益2,070億円(+6.4%)・純利益1,545億円(+20.0%)と増益、ROE 14.1%は自己資本比率19.9%(財務レバレッジ約5.03倍)から生まれており中部電力(7.7%・41.0%)と正反対、海外事業は96人・売上37億円で利益126億円(利益率341.0%・1人あたり1億3,161万円)を稼ぐ一方で送配電事業は3,776人・利益率1.15%で△68.8%の減益かつ設備投資は利益の17.7倍、発電・販売事業は原子力稼働により利益率が5.69%から7.40%へ改善したが補助金530億円を含む、フリーキャッシュフローは+550億円と中部電力より健全、平均年収842万8円(+4.4%)は「賞与支給額等の見直し」による、そして2027年3月期は第1四半期が経常+45.9%と好調でも通期は経常△13.1%の減益予想——九州電力の構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 電力業の構造的課題——自己資本比率19.9%という薄さ/送配電事業——利益△68.8%、投資は利益の17.7倍/補助金530億円という一過性の要素/2027年3月期は経常△13.1%——第1四半期は好調でも
- 第3.5章 面接前に押さえる九州電力の最新ニュース10本——海外96人・送配電△68.8%・2027年計画まで
- 第4章 内定者の正体——「インフラを支えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収842万円の読み方と、7セグメントのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——勤続20.8年、単体の99.3%が発電・販売、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生