東京ガス(9531)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、東京ガスを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「純利益が3倍になった」です。
有報の数字(第226期)
- 売上高
- 2兆8,347億円
- 純利益
- 2,269億円
- ROE
- 13.2%
- 従業員数(連結)
- 16,001人
- 従業員数(単体)
- 3,769人
- 平均年間給与(単体)
- 784万円
- 平均年齢
- 43.3歳
- 平均勤続年数
- 19.5年
出典:東京ガスの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
東京ガスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、東京ガスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは東京ガスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、東京瓦斯株式会社 有価証券報告書 第226期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
東京ガスは、ガスだけでなく電力と海外でも稼ぎ、利益が大きく振れる会社だ。
知っておきたいことは3つある。
売上2兆8,347億円のうち、都市ガスの販売は40.3%だ。電力が23.1%まで育っている。
純利益は2,268億円で、前期の約3倍に増えた。ただし主因は本業ではなく、特別な利益だ。
2026〜2028年度の中期経営計画が進行中だ。28卒の入社日(2028年4月)は、その最終年度の初日にあたる。
この記事では、会社が何に賭け、利益がなぜ振れ、どこで稼いでいるかを確かめる。
第1章 東京ガスは何に賭けているのか
1-1. 会社が掲げた約束——2026-2028年度の中期経営計画
東京ガスは2025年10月に、2026-2028年度の中期経営計画を策定した。グループ経営ビジョン「Compass2030」の前倒し実現を目指している。
会社が掲げた数字は2つある。1つ目は、本業の利益(営業利益+持分法利益)2,100億円だ。2つ目は、ROE 9%である。ROEは、株主から預かったお金でどれだけ利益を出したかを示す。
当期のROEは13.2%で、目標を上回った。だが翌年度の見通しは8.0%で、目標を下回る。
投資の規模も示されている。営業キャッシュフロー(本業で稼ぐ現金)は、3か年で約1.2兆円。投資は1.1〜1.3兆円だ。稼いだ現金をほぼ全部、次の事業に回す計画である。
28卒が入る2028年4月は、この計画の最終年度の初日だ。あなたの入社年に、3年計画の答えが出る。
志望動機では、入社年が中計の最終年度にあたる点を根拠にできる。逆質問では「中計のROE目標9%は当期実績13.2%より低いが、どう位置づけているか」と聞ける。
1-2. 純利益が3倍になった中身——本業の伸びは+48.5%
当期の純利益は2,268億円で、前期比+205.8%だった。ただし本業の営業利益の伸びは+48.5%にとどまる。
差を生んだのは特別損益だ。為替換算調整勘定取崩益として680億円を計上した。海外子会社の再編等に伴い、純資産に積み上がっていた為替の含み益を、損益に振り替えたものだ。
一方で、減損損失も302億円計上している。減損損失とは、資産の価値が下がった分を損失にしたものだ。
つまり「営業+48.5%」が本業の実力で、「純利益+205.8%」は特別利益込みの数字になる。
課題指摘で「3倍増の主因は特別利益で、本業の伸びは+48.5%」と切り分けて語れる。同じ数字を見て分けられる学生は少ない。
1-3. 売上の中身——ガスは減り、電力と海外が伸びる
当期、都市ガスの販売は前期比△5.3%と減った。一方で電力は+10.4%、海外は+33.5%と伸びている。
2016年の電力小売の全面自由化以降、東京ガスは「ガス会社」から「総合エネルギー企業」へ変わってきた。その転換が数字に出ている。
LNG(液化天然ガス。都市ガスの原料)の販売・トレーディングも伸びている。売るだけでなく、調達の強みを商売にしている。
志望動機で「ガスが減る中で、電力と海外にどう関わりたいか」を語る根拠になる。逆質問では、ガス事業の縮小への備えを聞ける。
1-4. 働く側の事実——連結16,001人、年収784万円
連結の従業員は16,001人。そのうち提出会社(東京瓦斯株式会社)は3,769人だ。連結の約4分の1にあたる。
事業別では、エネルギーソリューションが9,944人で最多(62.1%)だ。ネットワーク(ガス導管の維持管理)が3,801人、都市ビジネス(不動産)が1,021人と続く。海外は524人である。
提出会社の平均年齢は43.3歳、平均勤続は19.5年。平均年間給与は784万円で、前年から+2.5%だった。
志望動機では、希望する事業の人員規模を踏まえて語れる。逆質問では「少人数の海外部門で、若手はどんな役割を担うか」と聞ける。
第2章 エネルギー業の収益構造
2-1. 利益が振れる理由——原料費調整制度のタイムラグ
都市ガスの原料はLNGで、ほとんどを海外から輸入する。価格は国際市況と為替で決まり、東京ガスには動かせない。
日本には「原料費調整制度」がある。原料価格の変動を、一定期間後にガス料金へ反映する仕組みだ。反映には時間差があるため、価格の急騰時は利益が圧迫され、急落時は利益が膨らむ。
純利益は第223期に2,809億円、第225期に741億円と、大きく動いた。第223期は資源価格が高騰した局面で、このタイムラグ益が大きかった。
ガス会社の利益は、資源価格の方向で決まる。この構造を知らないと、決算を読み違える。
課題指摘で「安定したインフラ企業に見えるが、利益は資源価格で大きく振れる」と語れる。逆質問では、振れを抑える工夫を聞ける。
2-2. 電力と海外——伸びる柱と、そのリスク
電力は、既存のガス顧客との接点に電気を乗せて伸ばしてきた。東京電力もガスを売るようになり、互いの領域に踏み込む競合関係にある。
海外の中核は、北米のシェールガス事業だ。シェールガスは、地下の岩盤から採るガスである。売上は2,411億円で、資源価格が下がれば減損につながり得る。
一方で、自ら資源を持てば、LNGの調達価格を安定させやすい。LNGは1969年の受入開始以来、5カ国10プロジェクトから購入している。
志望動機では「調達から販売までつなぐ構造」に魅力を感じた理由として語れる。逆質問では、海外資源事業のリスク管理を聞ける。
東京ガスの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(都市ガス販売の減少——△5.3%が示すもの/資源価格という制御不能な変数/脱炭素とe-methane——ガス会社の生存戦略/規制事業と自由化事業の二重構造)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上2兆8,347億円(+7.5%)、純利益2,268億円(+205.8%、うち為替換算調整勘定取崩益680億円)、営業利益+48.5%という本業の実力、都市ガス△5.3%に対し電力+10.4%・LNGトレーディング+72.8%・海外+33.5%——東京ガスの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 エネルギー業の構造的課題——都市ガス販売の減少——△5.3%が示すもの/資源価格という制御不能な変数/脱炭素とe-methane——ガス会社の生存戦略/規制事業と自由化事業の二重構造
- 第3.5章 面接前に押さえる東京ガスの最新ニュース10本——中期経営計画・ROIC導入・シェールガスまで
- 第4章 内定者の正体——「インフラだから安定」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——平均年収784万円の読み方と、連結1.6万人でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——女性役員比率18.2%の他社比較、勤続19.5年の意味、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生