NTTデータ(9613)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、NTTデータを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「受注残2.2兆円」です。
有報の数字(第37期)
- 売上高
- 4兆6,387億円
- 純利益
- 1,425億円
- ROE
- 8.0%
- 従業員数(連結)
- 197,777人
- 従業員数(単体)
- 1,592人
- 平均年間給与(単体)
- 923万円
- 平均年齢
- 39.7歳
- 平均勤続年数
- 14.1年
出典:NTTデータの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに——「日本最大級のSIer」の本当の意味
NTTデータを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、NTTデータに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはNTTデータの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
NTTデータは、データセンターに巨額を投じる世界規模のITグループへ変わりつつある会社だ。
知っておきたいことは3つある。
賭け先はデータセンターだ。海外の設備投資計画は約2兆円で、日本の約3倍にあたる。SIer(企業や官公庁のシステムを請け負って作るIT会社)のイメージだけでは、話が噛み合わない。
海外は規模が先行し、利益が追いついていない。海外セグメントの営業利益は、前期比で13.4%減った。
働く条件は整っている。単体の平均年収は923万円で、月の残業は約31時間(部署により変動)だ。
この記事では、会社が何に賭け、その賭けのどこに課題があるかを確かめ、面接で自分の言葉で語れる形にする。
第1章 NTTデータは何に賭けているのか
1-1. 賭け先は海外のデータセンター、投資は2兆円
有報(有価証券報告書。会社が投資家向けに出す公式の報告書)の設備投資計画で、海外は2兆0,082億円にのぼる。日本の6,703億円の約3倍だ。
注記を読むと、投資の中身はデータセンターである。有報は自社を「グローバルでプレゼンスの高いデータセンター事業者でもある」と書く。
同じ文に「財務健全性への影響を考慮しつつ」という但し書きがある。会社自身が、投資の重さを意識している。
志望動機で、この会社をシステム開発だけの会社と見ていないと示せる。「財務への影響をどう管理するか」は逆質問になる。
1-2. 「アセットベース」とは、人から資産への転換
戦略3は「アセットベースのビジネスモデルへの進化」だ。アセットとは資産のことである。
従来のシステム会社は、人が時間を売る商売(人月型)だった。エンジニアの人数と稼働時間が、そのまま売上になる。
アセットベースは逆で、データセンターなどの資産を持ち、使ってもらって収入を得る。人を増やさなくても、使われる量が増えれば売上が伸びる。
その実行がデータセンター事業だ。売上は3,712億円で、前期比30%増えた。受注残高(契約済みで、まだ売上になっていない仕事)は2.2兆円ある。
逆質問にできる。「アセットベースへの進化を掲げておられます。人月型のビジネスと比べて、収益の見え方はどう変わるのですか」と聞ける。
1-3. 課題は海外の収益性と、膨らむ借入
事業は、日本(公共・金融・法人の3分野)と海外の二層でできている。日本は3分野とも安定して増益だった。
一方、海外セグメントの営業利益は1,002億円で、前期比13.4%減った。地域ごとの事業単位(リージョナルユニット)の収益性が悪化したためだ。
有報は海外の課題を「質を伴った成長」と書く。これまでは規模が先行していた、と読める。
投資の資金は借入が支える。連結有利子負債(利子を払って借りているお金の残高)は2.6兆円で、前期より4,238億円増えた。2026年3月期には、データセンターの固定資産をNTT DC REIT(不動産投資信託)へ譲渡し、資金の回収を早める。
課題指摘に使える。海外の利益減と借入増を挙げ、立て直しにどう貢献できるかを語るか、「どう立て直すか」を聞く。
1-4. 中期経営計画の目標と、持株会社化
2022年に始まった中期経営計画(FY2022〜FY2025)は、「IT業界のGlobal Top 5」を目指すと掲げた。目標は連結売上高4.7兆円だ。
利益面の目標は、連結営業利益率10%と海外EBITA率10%である。EBITA率は、海外事業の利益率を測る指標だ。会社は2025年3月期に、これらの達成見通しを示した。
2023年7月には、NTT Ltd.との事業統合で持株会社化した。世界規模の競争に本格参入する決断だった。
逆質問にできる。計画期間は2025年度までなので、「次の計画で何を引き継ぎ、何を変えるのか」を聞ける。
1-5. 「Best Place to Work」——人への投資
戦略5は「人財・組織力の最大化」で、キーワードは「Best Place to Work」だ。育てたい人材として、生成AIやコンサルティングなど専門性の高い人財を挙げている。
グループ従業員は19万人超。2024年度の新卒採用は697名で、全員が総合職として採用される。大卒の初任給は274,790円で、毎年引き上げている。
志望動機に使える。生成AIやコンサルティングの力を身につけたいという動機は、会社の人材方針と重なる。
第2章 業界比較——大手SIerとの戦略の違い
比べる相手は、富士通、日立製作所、NEC、NRI(野村総合研究所)だ。年収は2025年3月期の有報ベースで、NTTデータ以外は参考値である。
2-1. 年収は大手の中位、NRIが突出
NTTデータの平均年収923万円は、大手SIerの中で中位の水準だ。富士通の963万円とNECの840万円の間に入る。
NRIは1,322万円で、SIer業界のトップクラスにある。NTTデータでは、課長クラスで1,300万円が現実的な水準だ。
志望動機を年収だけにすると、NRIや富士通と比べられて弱くなる。年収は働く側の事実として押さえ、志望動機の軸は別に置く。
2-2. 差別化は「ハードを持たないIT特化」
富士通のUvance、日立のLumada、NECのBluStellarは、各社のIT事業の看板ブランドだ。この3社はメーカー系で、NTTデータはハードウェア事業を持たないIT特化型である。
強みは3つ挙げられる。
規模:連結子会社315社、世界50以上の国・地域に広がる。
公共・金融の安定基盤:中央府省、自治体、メガバンク、地銀との長期取引だ。マイナンバーカード関連や行政DXが追い風になる。
データセンター×生成AI:北米中心に約1,500MW(電力の規模を示す単位)を提供し、生成AI需要の拡大を受ける立場にある。
志望動機に使える。「なぜ富士通や日立でなくNTTデータか」への答えとして、ハードを持たないIT特化とデータセンターを軸にできる。
NTTデータの構造的課題と追い風は、6つに分けて第3章で扱う(追い風1:日本政府のIT投資加速(行政DX、マイナンバーカード)/追い風2:データセンター需要の構造的拡大/追い風3:SAPクラウド移行とクラウド・トランスフォーメーション/構造的課題1:海外セグメントの収益性悪化/構造的課題2:有利子負債の積み上がり/構造的課題3:生成AI時代の事業モデル変革)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
有料記事で読めること
- 第3章 業界の構造的課題と追い風——追い風1:日本政府のIT投資加速(行政DX、マイナンバーカード)/追い風2:データセンター需要の構造的拡大/追い風3:SAPクラウド移行とクラウド・トランスフォーメーション/構造的課題1:海外セグメントの収益性悪化/構造的課題2:有利子負債の積み上がり/構造的課題3:生成AI時代の事業モデル変革
- 第3.5章 押さえておくべきNTTデータ最新ニュース10選
- 第4章 内定者の正体——選考プロセス分析
- 第5章 職種別キャリア分析
- 第6章 働く環境の現実
- 第7章 面接攻略——有報を使った回答例と逆質問
- 第8章 やましゃんの総合評価