スクエニ(9684)の企業研究——有価証券報告書で読む
このページは、スクエニを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「70人で営業利益112億」です。
有報の数字(第46期)
- 売上高
- 2,977億円
- 純利益
- 296億円
- ROE
- 8.7%
- 従業員数(連結)
- 4,290人
- 従業員数(単体)
- 26人
- 平均年間給与(単体)
- 1,315万円
- 平均年齢
- 48.0歳
- 平均勤続年数
- 5.9年
出典:スクエニの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。
はじめに
スクウェア・エニックスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、スクウェア・エニックスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはスクウェア・エニックスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。
※本記事の数値は、株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス 有価証券報告書 第46期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。
結論から言う。スクウェア・エニックスは、売上が減っても利益が増える会社へ作り替えている最中だ。
知っておきたいことは3つある。
第46期(2026年3月期)は、売上高が8.3%減った。それでも営業利益は34.9%増えた。タイトル数を絞る「量から質」への転換が、数字に出た年だ。
会社は自分で財務目標を3つ決めた。営業利益率15%はすでに超えたが、ROE(株主のお金でどれだけ利益を出せたかを示す比率)10%以上には届いていない。
従業員わずか70人のライツ・プロパティ等事業が、営業利益112億円を稼ぐ。人が多い事業ほど稼ぐとは限らない会社だ。
この記事では、会社が何に賭けているか、利益が増えた理由、事業ごとの稼ぎ方の差を確かめる。
第1章 スクウェア・エニックスは何に賭けているのか
1-1. 会社が自分で決めた3つの目標と、3つの賭け
有報の「経営方針」には、財務目標が3つだけ書かれている。会社が自分で決めた物差しだ。
・2027年3月期の連結営業利益率15%
・3年間の戦略投資枠は最大1,000億円(成長投資か株主還元に使う枠)
・ROE10%以上
当期の営業利益率は18.4%で、目標をすでに超えた。一方ROEは8.7%で、目標に届いていない。
土台は、2024年5月に発表した中期経営計画「Square Enix Reboots and Awakens」だ。副題は「再起動の3年間」。前の計画の反省を、成果5つ、課題4つと具体的に書いている。課題には、家庭用ゲームの低収益性や、事業全体の組み合わせの管理が不十分なことが挙がる。
再起動の賭けは3つある。
・量から質への転換:長く愛されるタイトルに人材と開発投資を集める。
・組織の作り替え:事業部制(BU制)を廃止し、開発を一体運営にした。プロデューサーの役割も定義し直した。
・複数機種への展開:任天堂、PlayStation、Xbox、PCへ広く出す。
志望動機に使える。3つの賭けのどれに自分が貢献したいかを語れる。逆質問では「ROE10%以上に向け、戦略投資枠をどう使う方針か」と聞ける。
1-2. 売上が減ったのに利益が増えた理由
営業利益とは、本業で稼いだ利益のことだ。主力のデジタルエンタテインメント事業(ゲーム)は、売上が16.3%減ったのに、営業利益は28.0%増えた。
理由は有報に書いてある。
・家庭用ゲーム:『ファイナルファンタジータクティクス』『ドラゴンクエストI&II』『ドラゴンクエストVII Reimagined』などの新作と、過去作が売れた。
・オンラインRPG:前年に『ファイナルファンタジーXIV』の拡張パッケージを出した反動で、減収減益。
・スマホ・PCブラウザ:既存タイトルは弱いが、決済手段の多様化で増益。アプリストアを通さない決済が増えれば、手数料が減り、手元に残る額が増える。
全体の利益は、本業だけで決まらない。経常利益は、本業の利益に為替差益などを加えたものだ。円安による為替差益72億円が、これを押し上げた。一方、BU制の廃止に伴う組織再編費用121億円は、特別損失として計上された。
課題指摘に使える。利益の伸びを、本業の力と為替の影響に分けて話すと、決算を読めていることが伝わる。
1-3. 事業ごとの稼ぎ方と、人の配置
連結従業員は4,290人。うち3,020人がデジタルエンタテインメント事業で、全体の約7割を占める。
一方、ライツ・プロパティ等事業の従業員は70人だ。自社IPを他社に使わせ、ロイヤリティ(使用料)を受け取る事業である。営業利益率は44.8%、従業員1人あたりの営業利益は1億6,053万円に達する。これはデジタルエンタテインメント事業の約11倍にあたる。
働く側の事実も押さえる。提出会社(持株会社)の従業員は26人。平均年齢は48.0歳、平均勤続は5.9年、平均年間給与は1,315万円だ。ただしこの26人は管理部門で、事業会社の実態を表さない。
志望動機と逆質問に使える。少人数で稼ぐIP事業と、人の多い開発現場のどちらで価値を出したいかを語れる。事業会社の給与水準は、逆質問で確かめる。
1-4. いまは中期経営計画の2年目
28卒が入社するのは2028年4月だ。中期経営計画は2025年3月期〜2027年3月期の3年間で、当期はその2年目にあたる。つまり入社時には「再起動の3年間」は終わり、次の計画が始まっている。
直近5期で、売上は18.5%減った。この厳しい時期を受けて、「再起動」という言葉が使われている。3つの目標のうち、利益率はすでに超えた。焦点は、ROEの目標と、戦略投資枠の使い道に移る。
逆質問に使える。「再起動の3年間の結果を、次の中期計画にどう引き継ぐのか」と聞ける。志望動機では、次の計画の担い手になる姿勢を語れる。
第2章 ゲーム・エンタメ業の収益構造
2-1. IPという資産——作るのは一度、売るのは何度でも
この会社の核は、『ファイナルファンタジー』『ドラゴンクエスト』というIP(知的財産)だ。他社にIPを貸せば、追加のコストはほとんどかからずロイヤリティが入る。先に見た高い利益率は、この仕組みから来る。
同じ構造は、過去作を売り続ける「カタログタイトル」にもある。有報は、当期のカタログタイトルの売上が前年を上回ったことを、増益の要因に挙げている。一度作ったIPが、何年も稼ぎ続ける。
志望動機に使える。IPを長く育てる仕事に、自分がどう関わりたいかを語れる。
2-2. 新作開発のむずかしさ
一方、新作は売れるかどうかが分からない。有報は市場の厳しさをこう書く。一部の大型タイトルに人気が集中し、「新作タイトルのヒット率は低下傾向」にあるという。
当期に底堅かった新作は、『ファイナルファンタジータクティクス』『ドラゴンクエストI&II』『ドラゴンクエストVII Reimagined』だった。いずれも、既存IPを活かした作品である。「量から質」の意味は、この環境の中で読むと分かりやすい。
課題指摘と逆質問に使える。ヒット率が下がる中で、既存IPの強みと新しい挑戦をどう両立するかを、自分の言葉で問える。
2-3. 出版とアミューズメント——ゲーム以外の柱
出版事業はコミック雑誌と単行本を手がけ、営業利益率は33.1%だ。有報によると、市場では紙が減る一方、電子書籍が伸びている。ゲームとマンガはIPを共有できるため、互いの価値を高め合う関係にある。
アミューズメント事業は、施設運営と業務用ゲーム機器の事業だ。人手がかかるため、営業利益率は12.3%と低い。それでも売上規模はデジタルエンタテインメント事業に次ぐ2番目である。
志望動機に使える。ゲームとマンガ、施設をIPでつなぐ中で、自分が何をしたいかを語れる。
スクエニの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(組織再編費用121億円——作りかけの資産を捨てた/売上の縮小が止まらない/AIという環境変化/現金2,758億円をどう使うのか)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。
ここまでが無料パートです。売上高2,977億円(△8.3%)に対し営業利益547億円(+34.9%)・経常利益645億円(+57.5%)、従業員70人のライツ・プロパティ等事業が営業利益112億円(利益率44.8%)、組織再編でコンテンツ廃棄損99.73億円を含む121億円の特別損失、現金2,758億円は総資産の63.0%——スクウェア・エニックスの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。
有料記事で読めること
- 第3章 ゲーム・エンタメ業の構造的課題——組織再編費用121億円——作りかけの資産を捨てた/売上の縮小が止まらない/AIという環境変化/現金2,758億円をどう使うのか
- 第3.5章 面接前に押さえるスクウェア・エニックスの最新ニュース10本——組織再編・新作タイトル・第47期予想まで
- 第4章 内定者の正体——「ゲームが好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
- 第5章 職種別キャリア分析——4事業での職種の違いと、4,290人組織でのキャリア
- 第6章 働く環境の現実——女性役員比率25.0%の他社比較、勤続5.9年の意味、財務から見る雇用の安定性
- 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本
- 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生