ヤマダHD(9831)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、ヤマダHDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「家電の利益率0.19%」です。

有報の数字(第49期)

売上高
1兆6,918億円
純利益
148億円
ROE
2.3%
従業員数(連結)
26,747人
従業員数(単体)
561人
平均年間給与(単体)
560万円
平均年齢
46.9歳
平均勤続年数
14.1年

出典:ヤマダHDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

ヤマダホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、ヤマダホールディングスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはヤマダホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、株式会社ヤマダホールディングス 有価証券報告書 第49期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。

ヤマダホールディングス(以下ヤマダHD)は、売上が過去最高なのに利益が5期で最低になった会社だ。「家電量販店」の利益は、いまや家電から来ていない。

知っておきたいことは3つある。

・第49期(2026年3月期)の売上高は1兆6,918億円で、5期で最高だった。一方、経常利益(本業と財務を合わせた利益)は200億円で、前期より58.4%減った。
・売上の77.2%を占める家電事業(デンキ)は、営業利益率が0.19%しかない。1,000円売って残るのは約2円だ。
・利益の大半を稼ぐのは、売上の2割ほどの住宅事業(住建)である。会社は2030年3月期に経常利益1,000億円を掲げている。

この記事では、会社が何に賭け、どこで稼げていないのかを数字で確かめる。

第1章 ヤマダHDは何に賭けているのか

1-1. 賭けの中身——2030年に経常利益1,000億円、そのために資産1,300億円を売る

有報の「対処すべき課題」に、会社が自分で決めた目標がある。2030年3月期に売上高2兆2,000億円、経常利益1,000億円、ROE 8.5%だ。ROEとは、株主から預かったお金でどれだけ稼いだかを示す率である。

当期のROEは2.3%だった。経常利益の目標は、当期の5倍にあたる。さらに会社は「PBR1倍超」も掲げる。PBRは株価が会社の純資産の何倍かを示す値で、1倍割れは株価が純資産を下回る状態だ。

その手段が資産売却である。主にデンキが持つ、総額約1,300億円(取得額ベース)のノンコア事業資産を「2年以内を目途」に売る。ノンコアとは、本業の中心ではない資産のことだ。

売った資金は、店舗開発、M&A、借金の返済、株主還元の4つに回す。会社は「聖域なき」再編と書いている。

28卒の入社は2028年4月で、中期経営計画(2026年3月期〜2030年3月期)の4年目にあたる。資産売却は終わり、成果が問われる時期だ。

面接での使い方

志望動機で「経常利益1,000億円という目標に、どの事業で貢献したいか」を語れる。逆質問では、売却資金の配分がどこまで進んだかを聞ける。

1-2. 翌期の計画は営業利益3倍超——ただし会社自身が「不確定」と書く

当期は売上が3.9%増えたのに、経常利益は大きく減った。翌2027年3月期の見通しは、これと正反対である。

会社は営業利益(本業の儲け)を515億円、前期比218.6%増と見込む。当期の161億円から、3倍以上になる計算だ。

施策は、業務効率化推進室を中心にした本社の合理化、物流の見直し、店舗の統廃合と人材の適正配置である。一方で、資産売却は「不確定な部分も多い」と有報自身が書いている。

面接での使い方

課題指摘では、計画の大きさと不確かさを両方押さえて語れる。逆質問では、店舗統廃合による人材の適正配置が現場にどう及ぶかを聞ける。

1-3. 稼げていないのはデンキ——売上は伸びたのに利益が91.7%減

事業ごとに見ると、理由がはっきりする。デンキは売上が1.3%増えたのに、セグメント利益(事業ごとの利益)は24億円と、前期の10分の1以下になった。減少率は91.7%だ。

一方、住建の利益は102億円で、前期より増えた。デンキ以外は増益で、デンキ1つで全体の利益が沈んだことになる。

会社は金融セグメントの利益率が26.7%と高い。ただし従業員は127人で、規模は小さい。

面接での使い方

課題指摘で「利益がデンキの1事業に左右される構造」を挙げ、自分がどの事業で貢献するかに結べる。志望動機では、デンキの立て直しか、伸びている事業の拡大かを選んで語れる。

1-4. 働く側の事実——従業員26,747人の7割近くがデンキ

連結従業員は26,747人だ。うちデンキが18,114人、住建が7,445人で、金融は127人である。この会社の社員は、7割近くが家電販売にいる。

株式会社ヤマダデンキ(17,313人)の平均年齢は44.0歳、平均勤続は12.2年、平均年間給与は476万円だ。持株会社(561人)の平均年間給与は560万円で、差は約84万円ある。

有報は「賞与については、会社の業績や個人評価により変動させております」と書く。純利益が45.1%減った期には、この方針が直接効いてくる。

面接での使い方

志望動機では、配属先(店舗か本社か)と給与水準を踏まえた説明ができる。逆質問では、賞与と業績の連動について聞ける。

第2章 家電量販業の収益構造

2-1. 家電量販はなぜ利益が薄いのか

家電量販の商売は、メーカーから仕入れて売ることだ。利益は仕入れ値と売り値の差である。その差が小さいことを、デンキの営業利益率0.19%が示している。営業利益率とは、売上のうち本業の儲けが何%残るかを表す。

薄い理由は3つある。

・価格が比較されやすい。型番が同じなら、ネットで最安値がすぐ分かる。
・在庫と店舗が重い。大きな商品は、保管にも配送にも費用がかかる。
・人が要る。家電は説明を要する商品で、デンキに18,114人がいる。人件費は売上が伸びなくても減らない。

だから売上が少し動くだけで、利益は大きく振れる。第49期は売上1.3%増でも、利益は91.7%減った。

面接での使い方

志望動機で「薄利の事業だからこそ、利幅を上げる仕事に関わりたい」と語れる。課題指摘では、固定費の重さを根拠にできる。

2-2. 「くらしまるごと」という答えと、環境事業

ヤマダHDの答えが「くらしまるごと」戦略だ。家電だけでは利益が薄い。だから家具、住宅、リフォーム、金融、リユースへ広げる。住建・環境・金融の利益率は、いずれもデンキを上回る。金融は26.7%に達する。

環境事業は規模が小さいが、育てにいっている。売上は18.6%伸び、設備投資は利益の4.5倍の84億円だ。古い家電の引き取りで集まるものが、リユースの原料になる。

有報には、廃棄物焼却発電施設が2027年に稼働予定とある。

面接での使い方

志望動機で「家電を売る入口から、住宅や環境へ広げる戦略に関わりたい」と語れる。逆質問では、2027年稼働予定の発電施設の進み具合を聞ける。

2-3. 同業他社と並べた位置

同じ連載で取り上げた小売企業と比べる。ヤマダHDの売上は4位だ。ところが営業利益率は0.96%、ROEは2.3%で、どちらも最下位である。

しまむらは、売上がヤマダHDの41%なのに、営業利益は3.8倍ある。売上の大きさと利益は、比例していない。

面接での使い方

課題指摘で「規模に利益が追いついていない」と根拠を添えて言える。他社と比べて志望理由を語るときの土台にもなる。

ヤマダHDの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(デンキセグメント0.19%をどう戻すか/利益の集中——住建1つに63.9%/投資と利益のギャップ/ROE 2.3%という資本効率)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上1兆6,918億円(+3.9%)で5期最高なのに経常利益200億円(△58.4%)・純利益147億円(△45.1%)・ROE 2.3%は5期最低、デンキセグメントは売上構成77.2%で利益構成15.5%・営業利益率0.19%、住建は売上19.4%で利益63.9%、1人あたり営業利益はデンキ13.8万円に対し金融991万円で72倍、デンキの減損50億円は利益の2.0倍で設備投資は362億円、現金は302億円減——ヤマダHDの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 家電量販業の構造的課題——デンキセグメント0.19%をどう戻すか/利益の集中——住建1つに63.9%/投資と利益のギャップ/ROE 2.3%という資本効率
  • 第3.5章 面接前に押さえるヤマダHDの最新ニュース10本——デンキ△91.7%・2027年3月期は営業利益3.2倍計画まで
  • 第4章 内定者の正体——「家電が好きです」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収476万円の読み方と、2.7万人組織でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——正社員比率の高さ、賞与が業績連動である意味、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. ヤマダHDの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第49期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は560万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. ヤマダHDの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第49期)では、提出会社(単体)が561人、連結が26,747人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. ヤマダHDが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。