吉野家HD(9861)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、吉野家HDを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「組合員が正社員の2.8倍」です。

有報の数字(第69期)

売上高
2,257億円
純利益
47億円
ROE
7.1%
従業員数(連結)
3,361人
従業員数(単体)
399人
平均年間給与(単体)
726万円
平均年齢
47.9歳
平均勤続年数
18.4年

出典:吉野家HDの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

吉野家ホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、吉野家グループに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたは吉野家ホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、株式会社吉野家ホールディングス 有価証券報告書 第69期(2025年3月1日〜2026年2月28日)に基づきます。

吉野家HDは、牛丼とうどんに次ぐ柱としてラーメンの買収に賭ける会社であり、主力の吉野家は3事業で最も利益率が低い。

知っておきたいことは3つある。

2025年度(2026年2月期)は、売上高が2,256億円(前期比+10.1%)、営業利益が80億円の増収増益だった。

会社は2029年度に、売上高3,000億円・営業利益150億円を目標に掲げた。ラーメンを牛丼・うどんに次ぐ「第3の柱」にする計画だ。

正社員3,361名に対し、アルバイト・パートを含む労働組合員が9,545名いる。外食業では珍しい構造だ。

この記事では、会社が何に賭けているかと、その足元にある課題を確かめる。

第1章 吉野家ホールディングスは何に賭けているのか

1-1. 中期経営計画「変身と成長」——2029年度に売上3,000億円を狙う

吉野家HDは2025年5月に、2025年度から2029年度の中期経営計画「変身と成長」を決めた。中期経営計画とは、会社が数年先の目標を示した計画のことだ。

最重要課題は「既存事業の変革と新たなドライバーの成長」である。いまの事業を変えながら、新しい柱を育てると宣言している。

最終年度の目標は、売上高3,000億円と営業利益150億円だ。

あわせて、主要指標にROIC 7.0%を置いた。ROICとは、借入も含めて投じた資金に対し、どれだけ利益を出したかを示す率である。

当期の実績は、売上高2,256億円、営業利益80億円だった。営業利益は2倍近くに増やす計画になる。

面接での使い方

志望動機で「5年で営業利益を2倍近くにする計画に、自分も加わりたい」と語れる。逆質問では、計画1年目の進み具合を聞ける。

1-2. 賭けは口先ではない——ラーメン店を買い集めている

会社は有価証券報告書(会社が国に提出する年次報告書)で、「マルチブランドM&A戦略」を掲げている。M&Aとは企業の買収・合併のことだ。複数のラーメンブランドを買い集める方針を、自ら明言している。

実例もある。「キラメキノトリ」は初の海外進出として中国に出店し、「金澤濃厚中華そば神仙」は中国地方へ初進出した。

支えたのは、食材を作る宝産業や、フランチャイズ(加盟店展開)の知見を持つウィズリンクなどだ。すべてグループ会社である。ブランド名は残したまま、グループ横断で連携している。

資金の裏付けもある。5年間で総額1,300億円を投資する計画で、そのうちM&Aは400億円だ。

一方、国内では吉野家の事業会社6社を1社に統合している。外は買って増やし、内は束ねて意思決定を速める。

面接での使い方

志望動機で「第3の柱づくりに関わりたい」と語れる。逆質問では「買収したブランドを、どんな体制で育てるのか」を聞ける。

1-3. 中計1年目、店はすでに入れ替わっている

当期は中期経営計画の初年度にあたる。店舗数の動きを見ると、入れ替えが始まっている。

吉野家は51店を出して20店を閉め、1,290店になった。海外は111店を出し、74店を閉めて1,035店になった。

海外は開けながら、同じ規模に近い数を閉じている。出店数だけでは、実像を読み違える。

28卒が入社する2028年度は、中計の4年目にあたる。2029年度の目標に届くかが、ほぼ見えている時期だ。入社してすぐ関わる可能性が高いのがラーメン事業である。

面接での使い方

課題指摘で「海外は閉店も多いので、出店先の見極めに貢献したい」と言える。逆質問では、入社4年目の若手に何が求められるかを聞ける。

1-4. 増収でも、原価の重さが利益率を削った

当期は売上高が+10.1%増えたが、売上原価は+16.1%増えた。原価の伸びが、売上の伸びを上回っている。

その結果、売上から原価を引いた利益の割合(売上総利益率)は、63.98%から62.03%へ下がった。

外食の原価は、食材費が中心だ。牛肉、米、小麦、野菜は、近年値上がりしている。

それでも営業利益が増えたのは、販売や管理にかかる経費の伸びを抑えたからだ。原価高は防げなかったが、経費で吸収した。それが当期の姿である。

面接での使い方

課題指摘で「原価高を経費の節約だけで吸収し続けられるか」を論点にできる。逆質問では、原価高への対策を聞ける。

第2章 外食業の収益構造

2-1. 主力の吉野家が、最も利益率が低い

吉野家は売上の66.6%を占める主力だ。しかし利益率は5.04%で、3事業の最下位である。

ほかの2事業は、はなまる(讃岐うどん)が7.36%、海外が6.67%だ。

理由は3つ考えられる。

原材料:牛丼の主原料である牛肉と米は、国際市況と為替に左右される。

価格:牛丼は「安くて早い」ことが価値で、値上げは客数減に直結しやすい。

人手:吉野家には正社員1,399名に対し、臨時従業員(アルバイト・パートなど)が9,546名いる。最低賃金の上昇を直接受ける。

はなまるは、小麦が主原料で価格変動が牛肉より小さい。セルフサービス方式で、人件費も抑えやすい。

面接での使い方

課題指摘の中心にできる。「主力の収益性を上げる」ことを自分の貢献テーマに据えられる。逆質問では、価格と原価の考え方を聞ける。

2-2. 働く側の事実——アルバイトも組合員になっている

連結の正社員は3,361名、臨時従業員は14,746名である。持株会社(提出会社)の399名では、平均年齢が47.9歳、平均勤続年数が18.4年、平均年間給与が725万5,000円だ。

労働組合は3つある。吉野家ユニオンは、吉野家5,322名と関西吉野家2,939名。エスポワールはなまるは1,284名。合計9,545名で、ユニオンショップ制を採っている。これは、従業員が原則として組合に入る仕組みだ。

組合員は正社員の2.8倍にあたる。アルバイト・パートが多く加入していると読める。同業のスシローを運営するFOOD & LIFE COMPANIESには、労働組合がない。

アルバイトの声が経営に届き、定着につながりやすい。一方で、人件費は交渉を伴うため、柔軟に調整しにくい面もある。

面接での使い方

志望動機で「現場の声が届く職場で働きたい」と語れる。逆質問では、組合との対話が店舗運営にどう生きているかを聞ける。

2-3. 借入の使い方が変わろうとしている

自己資本比率は、5年で42.9%から54.5%に改善した。これは、総資産のうち返済不要の自己資金が占める割合だ。借入を減らし、財務を厚くしてきた。

ところが中計では、借入を使った資金調達(レバレッジファイナンス)を戦略的に活用すると書く。ただし、借入は自己資本の0.9倍以内に抑えるという規律も置いた。

M&Aに使う資金の一部は、借入になると読める。ROICを主要指標に選んだのも、借入を含む資金全体の効率を測るためだ。

面接での使い方

逆質問で「自己資本を厚くしてきた方針から、借入を使う方針に変わる中、案件の優先順位をどう決めるか」を聞ける。

吉野家HDの構造的課題と追い風は、3つに分けて第3章で扱う(売上原価が売上の1.6倍の速さで増えた/海外比率13.0%という水準/2027年2月期1Qは営業利益が2.4倍——国内吉野家6社の統合)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

ここまでが無料パートです。売上高2,256億円(+10.1%)・営業利益80億円(+10.7%)・経常利益88億円(+10.1%)・親会社株主帰属当期純利益46億円(+22.7%)と増収増益だった一方、売上原価が+16.1%と売上高の1.6倍の速さで増え売上総利益率は63.98%から62.03%へ△1.95ポイント悪化し、販管費の伸びを+6.5%に抑えて吸収したこと、3つのセグメントでは主力の吉野家が利益率5.04%と最も低く、はなまる7.36%・海外6.67%がこれを上回ること(1人あたりでもはなまる686万円 > 吉野家545万円 > 海外282万円)、セグメント利益127億円のうち36.3%(46億円)が調整額(全社費用)で消えていること、そして労働組合の組合員9,545名(吉野家ユニオン5,322名+2,939名、エスポワールはなまる1,284名)が連結正社員3,361名の2.8倍——ユニオンショップ制でアルバイトも組合員——という外食業では珍しい構造、臨時従業員14,746名は正社員の438.7%であること、財務は自己資本比率54.5%と5期で11.6ポイント改善した一方ROEは18.5%から7.1%へ低下したこと、海外比率13.0%は同業(スシロー30.6%、くら寿司28.0%)より低いが設備投資では37.1%を海外に配分していること、持株会社399名は47.9歳・勤続18.4年・年収725万5,000円でマーケティング本部機能強化等により44名増加したこと、そして2027年2月期第1四半期は国内吉野家事業会社6社の統合等により営業利益+140.8%・経常+125.0%・純利益+144.2%・既存店+9.8%と大幅増益で通期予想(売上+7.2%、営業+5.1%、経常+0.0%、純利益+5.0%)は据え置かれたこと——吉野家ホールディングスの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 外食業の構造的課題——売上原価が売上の1.6倍の速さで増えた/海外比率13.0%という水準/2027年2月期1Qは営業利益が2.4倍——国内吉野家6社の統合
  • 第3.5章 面接前に押さえる吉野家HDの最新ニュース10本——組合員2.8倍・原価+16.1%・1Q営業2.4倍まで
  • 第4章 内定者の正体——「牛丼が好き」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——持株会社の年収726万円の読み方と、3,361名でのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続18.4年、ユニオンショップ制、アルバイトが組合員である意味
  • 第7章 面接攻略——IRで差をつける志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問8本
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. 吉野家HDの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第69期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は726万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. 吉野家HDの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第69期)では、提出会社(単体)が399人、連結が3,361人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. 吉野家HDが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。