SBIホールディングス(8473)の企業研究——有価証券報告書で読む

このページは、SBIホールディングスを受ける28卒の就活生に向けたものです。会社が有価証券報告書に書いた数字を、企業研究と面接で使える形に並べます。直近の有報から出てきた事実は、「最高益の27%は一度きり」です。

有報の数字(第28期)

売上高
1兆8,966億円
純利益
4,276億円
ROE
28.0%
従業員数(連結)
18,669人
従業員数(単体)
389人
平均年間給与(単体)
1,007万円
平均年齢
41.3歳
平均勤続年数
5.7年

出典:SBIホールディングスの有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」「従業員の状況」。平均年間給与・平均年齢・勤続年数は提出会社(単体)の値。

はじめに

SBIホールディングスを受ける就活生は必ず読んでほしい。また、SBIホールディングスに勤める若手社員、中間管理職の方にも読んでほしい。自社の有価証券報告書を通しで読んだことがある社員は、ほとんどいない。この記事を最後まで理解できれば、あなたはSBIホールディングスの面接官より、この会社の論点を整理して語れるようになる。

※本記事の数値は、SBIホールディングス株式会社 有価証券報告書 第28期(2025年4月1日〜2026年3月31日)に基づきます。同社はIFRS(国際会計基準)を採用しています。直近の数字は2026年7月31日公表の2027年3月期第1四半期決算で補っています。

SBIは「ネット証券の会社」として知られているが、実際は銀行・保険・投資・暗号資産まで抱える金融グループで、いまは稼いだお金で次の事業を買い続けている。

知っておきたいことは3つある。

・最高益の4分の1強は、一度きりの売却益だ。税引前利益5,167億円のうち1,416億円は、住信SBIネット銀行の株を売った利益だった。
・会社は「AI・オンチェーン・メディア」に賭けると書いた。創業30周年の2029年3月期に向けた三大戦略目標である。
・利益の主役は、四半期ごとに入れ替わる。2027年3月期の第1四半期は、投資の事業が証券・銀行の事業を上回った。

この記事では、利益の中身、3つの賭け、主役の入れ替わりを確かめ、面接で自分の言葉にできる形にする。

第1章 SBIホールディングスは何に賭けているのか

1-1. 会社が自分で決めた目標——もう達成してしまった

SBIは2025年5月に「中期ビジョン」を公表し、連結の税引前利益5,000億円とROE15%を目標に置いた。ROEは、株主のお金でどれだけ利益を出したかを示す数字だ。

第28期、この2つをいきなり超えた。税引前利益は5,167億円、ROEは28.0%である。

そこで有報が前に出したのが、創業30周年の2029年3月期に向けた「三大戦略目標」だ。グループの完全なAIドリブン化、オンチェーン化(取引や決済をブロックチェーン上で完結させること)に向けた組織変革、そして新しいメディアの生態系づくりである。

面接での使い方

逆質問で、数字の目標を超えた後、次の物差しを何に置くのかを聞ける。

1-2. 減らす事業と増やす事業——売って、買う

有報は、事業の「選択と集中」で回収した資金を成長分野や革新的な事業展開を可能とする分野へ再投資すると書く。実際の動きがそのとおりだ。

売った側は、2025年10月に譲渡した住信SBIネット銀行の株と、2026年4月に一部を手放した韓国のSBI貯蓄銀行である。

買った側は暗号資産が目立つ。2022年のビットポイントジャパン、2025年のDMM Bitcoinの口座移管、2026年には取得で合意したビットバンクと、シンガポールのCoinhakoが続く。同じ領域で4件を重ねた。運用会社でもSBI岡三アセットマネジメントとレオス・キャピタルワークスを取り込んだ。同じ領域を続けて買い、既存の会社にまとめていく形は、ロールアップ(同業の買収を積み重ねて規模を取る手法)に近い。

面接での使い方

課題指摘で「買収で伸ばす会社は、統合がうまくいくかが勝負になる」と論点にできる。

1-3. 28卒は、創業30周年の年度の初日に入社する

三大戦略目標の節目は、創業30周年となる2029年3月期だ。28卒の入社は2028年4月で、その年度が始まる日にあたる。

AIは単なる効率化にとどまらない。有報は、顧客の資産状況やライフイベントに合わせて商品を提案する「金融AIコンシェルジュ」の構築を掲げる。2026年6月には、AI企業のAnthropicとグループ全体のAI化を進めると発表した。

入社直後は、3つの賭けの成果が問われる時期と重なる。

面接での使い方

志望動機で「AIとオンチェーン化の成果が問われる年に、現場で形にする側に立ちたい」と言える。

1-4. 稼ぎ頭はどこか——金融サービスが4分の3、ただし中身に注意

5つの事業のうち、証券・銀行・保険をまとめた金融サービス事業が、事業別の税引前利益の76.1%を出した。働く人も連結18,669人のうち15,677人がここにいる。

ただし、その利益の3分の1は住信SBIネット銀行株の売却益だ。売却益を除けば、金融サービスの比率は7割弱に下がる。

逆に、ベンチャー企業などに投資するPE投資事業は、1,460人で税引前利益820億円を出した。1人あたりでは金融サービスの2倍を超える。

面接での使い方

課題指摘で「本業の利益と、売却益・投資の利益を分けて見る必要がある」と言える。

1-5. 働く側の事実——持株会社は389人、平均年収1,006万円

有報の平均年収は、持株会社単体の数字だ。単体の従業員は389人、平均年齢41.3歳、平均勤続5.7年、平均年間給与は1,006万5,718円(前期比3.0%増)である。

389人のうち309人は管理部門などに属する。グループの18,669人の大半はSBI証券やSBI新生銀行などの事業会社で働いており、新卒の多くもそちらに入る。

面接での使い方

年収に触れるときは「持株会社の数字だと理解しています」と添えると、読んでいることが伝わる。

第2章 ネット金融の収益構造

2-1. 手数料をゼロにしても、儲かる理由

SBI証券は2023年9月、ネットでの国内株の売買手数料を無料にした。会社はこれを「ゼロ革命」と呼ぶ。

それでも第28期のSBI証券は、営業収益2,846億円、営業利益868億円と過去最高だった。売買の手数料以外で稼ぐからである。

決算説明資料が挙げる収益源の順番は、①金融収益(信用取引でお金を貸す金利など)、②トレーディング収益、③投資信託の報酬などの手数料だ。売買手数料は④にすぎない。入り口を無料にして口座を集め、預かった資産とお金の貸し借りで稼ぐ構造である。

面接での使い方

志望動機で「無料の入り口で顧客を集め、資産の残高で稼ぐ」構造に惹かれた、と理由つきで語れる。

2-2. 証券と銀行をつなぐ「企業生態系」

SBIの特徴は、証券・銀行・保険・資産運用を1つのグループで持ち、顧客を互いに送り合う点だ。有報はこれを「企業生態系」と呼ぶ。

2026年3月末の顧客基盤は8,256万件で、うち国内が約4,981万件。証券口座は2026年5月に業界で初めて1,600万口座を超えた。

ただし、株式市場の影響は避けられない。有報は、株価が下がると取引高が縮む傾向があり、市況が続く「保証はなく」と書く。

面接での使い方

課題指摘で「顧客基盤は強いが、収益は市況に左右される」という両面を語れる。

2-3. この構造で働く人の事実

連結の従業員は18,669人で、前期の19,156人から2.5%減った。売上に当たる収益が31.4%増えた年に、人は増えていない。

一方、グループ会社は子会社740社と持分法適用会社78社まで広がっている。少ない人数で多くの会社を動かす、持株会社の性格が強いグループだ。

面接での使い方

逆質問で、グループ間の異動や出向の実態を聞ける。

SBIホールディングスの構造的課題と追い風は、4つに分けて第3章で扱う(利益の主役が年ごとに入れ替わる/手数料ゼロの先の稼ぎ方/自己資本4.7%で38兆円を回す/創業者に依存する「何でもやる」会社)。ここから先は有料パートで、第7章の課題回答に直結させる。

■この会社の面接で落ちる人の共通点
「手数料無料で個人の資産形成を支えるSBI証券に惹かれました」と言ったあとに、面接官から「手数料を無料にしたのに、SBI証券が過去最高益なのはなぜだと思いますか」と返されて、言葉が止まる。無料化は入り口にすぎず、稼ぎ方は別にある。第4章では、この止まり方を3パターンに分けて、どこで差がつくかを書いた。

■逆質問の1本目だけ、ここに置いておく
「第28期の税引前利益5,167億円のうち1,416億円は住信SBIネット銀行株の売却益で、第1四半期はPE投資事業が金融サービス事業を上回りました。毎年の利益の土台として、現場では今後どの事業を最も重く見ていますか」
この質問を作るのに必要な数字は、売却益の大きさと、第1四半期の事業別の利益の2つだけだ。残り6本は、手数料無料化後の稼ぎ方、ステーブルコインJPYSC、ビットバンクの統合、女性管理職比率を、それぞれ同じ型で組んである。

ここまでが無料パートです。税引前利益5,167億円のうち売却益1,416億円、ROE 28.0%、金融サービスが事業別利益の76.1%、持株会社389人で平均年収1,006万5,718円——SBIの構造を数字で確認しました。ここから先は、この構造を選考で使える武器に変える有料パートです。

  • 第3章 ネット金融の構造的課題——利益の主役が年ごとに入れ替わる/手数料ゼロの先の稼ぎ方/自己資本4.7%で38兆円を回す/創業者に依存する「何でもやる」会社
  • 第3.5章 面接前に押さえるSBIホールディングスの最新ニュース10本——第1四半期の税引前利益+149.9%・預り資産75.3兆円・JPYSCまで。1本ごとに「面接で使うなら」
  • 第3.6章 数字で補足——5期の推移・セグメント別の利益と人員・ROEの分解・財務・株主還元・リスク要因
  • 第4章 内定者の正体——「手数料無料で個人投資家を支えたい」で落ちる理由、ES・面接の攻略、不合格パターン
  • 第5章 職種別キャリア分析——平均年収1,006万5,718円の読み方と、740社のグループでのキャリア
  • 第6章 働く環境の現実——勤続5.7年の読み方、女性役員比率15.8%と女性管理職比率26.9%、財務から見る雇用の安定性
  • 第7章 面接攻略——志望動機3つの型・課題回答2パターン・逆質問7本(それぞれの狙いつき)
  • 第8章 総合評価——推奨できる就活生と、慎重に検討すべき就活生

よくある質問

Q. SBIの平均年収はいくらですか。
A. 有価証券報告書(第28期)の「従業員の状況」によると、提出会社(単体)の平均年間給与は1,007万円です。連結の子会社や職種別の水準とは異なります。
Q. SBIの従業員数は何人ですか。
A. 有価証券報告書(第28期)では、提出会社(単体)が389人、連結が18,669人です。新卒で入るのが本体か子会社かで、この数字の意味は変わります。
Q. このページの数字の出典は何ですか。
A. SBIホールディングスが金融庁に提出した有価証券報告書と決算短信です。EDINETで誰でも無料で原文を確認できます。
Q. 有料のnote記事では何が読めますか。
A. 業界の構造的課題、面接前に押さえる最新ニュース、内定者の選考と面接攻略、職種別キャリアと年収、IRを使った回答例と逆質問です(買い切り1,480円)。